導入事例 / お客様の声

旭川市役所

次世代総合窓口グランドデザインをはじめとした様々な業務改革

CDO就任前の状況・課題

旭川市は北海道第二の中核都市であり、職員数は3000人を超える大規模な市役所です。

全国の自治体と同様に、下記の課題がありました。
①業務の複雑化や過多による職員の超過勤務が常態化し改善が見られない
②財政状況の逼迫 
さらに将来の労働力人口の減少予測から、職員数の確保にも頭を悩ませていました。

2021年9月、市長に就任した今津市長は、将来、職員数の確保が思い通りにならない状況においても、行政サービスを低下させない市役所を目指し、DXを推進することを掲げました。

 

今津市長のマニフェストより抜粋

 

CDO着任と課題解決に向けた取り組み

2022年、森本が旭川市のCDO(最高デジタル責任者)として着任し、初めにやったことは「よろず相談」です。

全部門を対象に、「個別相談会」への参加を呼びかけ、現場職員の業務の棚卸と業務フローの作成にあたりました。

「よろず相談」とすることで現場の職員が感じていた「今まで言い辛かった些細な日常業務での疑問や、悩み」を、話しやすい雰囲気で吸い上げることを狙いとしました。

また、これまで現場職員に改善のアイデアがあったとしても、管理職やトップに届く仕組みがなく、職員側も日々の業務に追われ、改善に向けた見直しが自発的に起こる状況にありませんでした。

そこで、現状の業務フローや経緯を深堀してヒアリングすることで、あるべき姿に向けた意識が職員の方に芽生え、具体的な改善の手法を理解出来るよう心掛けました。

 

R4年度~R6年度にかけて48課72件の相談が寄せられ、現在も継続して取り組んでいます。

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さて、他の多くの自治体でも根本的に存在する以下の4つの大きな課題について、解決への取り組みについてご紹介していきます。

課題①: 組織風土の改革

課題②: 業務効率化・生産性向上

課題③: コスト削減

課題④: 歳入増加

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課題1:組織風土の改革

DXといっても、単なるツール・システム導入では本質的な変革にはつながらないため、デジタルを使う「人」の在り方・考え方、つまり組織風土の改革最重要と考えます。

佐賀県庁をはじめ、これまで取り組んできた自治体においても、在任期間中の成果を出す事だけを目的とせず、自分が退任した後も職員が自ら行動し、改革し続ける組織になる状態まで導きたいという思いで業務にあたっています。

職員の戦略的思考を導く複数のフレームワークやデータ分析に基づいた手法でアプローチし、庁内業務の構造改革(業務フロー見直し・最適化)を進めました。

 

1)「旭川市dX加速化方針」策定

個別業務の改革は進めつつ、3年度目には、DX推進の考え方や心構えを可視化し、公式な資料として庁内外に示しました。
“dX” としたのは、デジタルツール(d)はあくまでも手段であり、業務変革(X)が重要であることから、小文字「d」+大文字「X」を強調したかったためです。

出典:旭川市dX加速化方針

  

 

 

2)GOSTR
組織の目標達成に向けた計画策定やプロジェクト管理の場面で使われる手法 (=GOSTR)を用いて、戦略的な目標設定、実行計画の策定、役割分担を明確化しています。

 

3)現場職員や新任管理職向けの研修

これまでに※1)延べ12回の研修(①入庁3年次研修 ②新任係長向け研修 等)を実施し、複数回にわたり「あるべき姿・マインド」を醸成出来るようお話させて頂いています。※1. R6年3月までに

 

 

 

 

課題2:業務効率化・生産性向上

1)旭川市 次世代総合窓口グランドデザイン

今津市長から最初に指示されたのは、職員数の確保が厳しくなる近未来においても、行政サービスを低下させない総合窓口を作ることでした。

単なるデジタルツール導入ではなく、最初に グランドデザイン(現状の調査・分析→目指す全体像を図表などに可視化したもの)の策定から着手。市民・市役所本庁・支所からの声を地道にヒアリングし、長期にわたる計画のロードマップを示しました。

 

2)紙からデータへ(副産物としてのペーパーレス化)

① 膨大な紙マニュアルの電子化 (一例)

— 消防や衛生検査など、現場立入が必要な業務での動画でのモバイル査察遠隔アドバイス等の導入。

生活保護ケースワーカーのタブレット導入:2022年から2年間で4倍に増やし、紙台帳はほぼ電子化され、生活保護システム上での電子決済での運用が定着。

— 特に申請書や台帳が多い8課へ視察とヒアリングを実施。 就任前から総務課で進めていた成果も大きく、全体で(2021⇒2023で)紙文書35%削減(コピー紙A4の発注数4092箱分)、文書の77%の電子化を達成。

 

 

 

 

② 職員自身が開発する業務アプリ

各課職員が自らの担当業務のフローを図式化・整理し、デジタル処理により効率化できそうな部分の目星を付けます。外部の事業者に発注するのではなく、ノーコードツールを利用し外部の事業者に発注するのではなく、ノーコードツールを利用し職員自身がアプリを開発する環境整備・支援を行いました。
試作アプリは1000個を超え、実際に150個の業務アプリが運用中です。

- 例)粗大ごみの受付フォーム作成で問合せ電話対応にかかる年間2000時間以上を削減見込み。

また、会議調整・情報共有など、日常業務の負荷も大幅に改善されました。

 

 

3)その他の基本的な業務遂行での改革

デジタル利用・推進の前提となるスキル・仕組みを示し、市職員に体得して頂くことを実践。

 ◦ 会議の準備、結果の共有、進捗の管理

 ◦ オンライン会議ツール、共有フォルダの管理

 ◦ 業務棚卸と業務フローの整理、図式化

 ◦ 民間事業者への適切な業務委託(見積交渉/業務内容精査/レビューサイクル導入)

 

 

課題3:コスト削減

多くの自治体が、民間事業者であれば当然やるような業者との交渉や、RFIを通して幅広く情報収集するノウハウを持っていません。旭川市では、情報化に関わる予算編成時ベンダーや事業者との折衝やヒアリングに情報政策課とCDOで加わり、最適なシステム構成・機能・コストかどうか精査するとともに、交渉・調整を行いました。

その結果、2023年から2024年で4億円以上の見積もり・発注コストの削減に成功しました。

 

課題4:歳入増加

ふるさと納税の増加を目指し、データ分析と他自治体の市場調査から市が気づいていなかった「最重要カテゴリ」を特定し下記を提案。

◦  高単価で高品質な「旭川家具」を全面に押し出したブランディング

◦  高所得者ターゲットへのピンポイント施策の実施

◦「家具の聖地」としてシティプロモーションを絡めたマーケティング/PRの重要性 

◦ それを実行できる「組織改編」(税制課→行政改革課へ移管)

 

 

また、中間事業者の業務内容とコスト精査→見直しすることにより旭川家具のプロモーション施策費用を捻出することに成功し、追加費用なしで実施出来ました。

家具で前年比2.4倍(+3.6憶円)以上、全体で+約6億円の増収を9か月で達成しました。

 

北海道旭川市ふるさと納税特設サイト

 

 

最後に

これらの取り組みにより、旭川市はデジタル化と業務改革を通じて、職員の働きがいや業務効率の向上、コスト削減、歳入増加を短期間に大きく前進させています。

大きな改革には痛みを伴う部分もあります。担当者や原課に一時的に業務負担が増加したことは否定できません。ただ、その苦しい時期を一緒に乗り越えて頂ければ、その後に長く続く「よりよい未来」を過ごすことが出来るようになります。

 

一般的に自治体にありがちと言われる
「問題の本質をとらえず、過去の調査をしない、一時的かつその場しのぎの策で根本的な解決がされない。議論だけして実行に移せない。民間企業の提案や知恵を活用しない。」 から抜け出し、
市民、職員、関係する地域の事業者、にとって愛され誇れる市役所になるお手伝いが出来るよう、これからも尽力していきます。

 

 

旭川市CDOとしての主な実績

 

1. 組織風土改革

 

   ● 「旭川市dX加速化方針」 策定/実行

   ● 「次世代総合窓口グランドデザイン」 策定/実行

   ● 職員・管理職研修(延べ12回)でのマインド醸成、自ら考えるDX人材の育成

 

2. 業務効率化・生産性向上

 

   ● 紙文書35%削減(コピー紙A4の発注数4092箱分)、全庁で文書の77%の電子化 ※2年間

   ● 消防・衛生検査・ケーススワーカーなど現場調査業務でのタブレット導入・DX化

   ● 庶務事務システム 導入後20,114時間の削減(約43%減)

   ● ノーコード・ローコードでの「職員の業務アプリ開発 150以上」、2000時間以上の削減見込み

   ● 職員の超過勤務:R9年までに-30%削減を目指す

 

3. コスト削減

 

  ● 事業外注時の交渉・調整のリードで、-4億円以上のコスト削減 ※2年間
  ● 評価対象案件168件(継続して出来るようスキルトランスファー)

 

4. 収入の増加   

  ● ふるさと納税での増収
  全体+6億円以上フォーカスした旭川家具で+3.6億円以上 (9か月の実績)

 

キャリアシフト株式会社

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